許せないその1 ギターのトップにシールを貼るな!


ギターのトップは、スプルース系の木が使われることが圧倒的に多い。
着色してあっても、多くは柾目の木目がきれいに活かされている。
ギターの音に関するパーツのうちでも、重要な部分だ。
見た目と音、どちらにしても、ギターのトップはギタリストにとって神聖な場所である。

では、その神聖な場所を犯すシールの貼付に対する功罪について、まずは音の面から考える。


トップに何かを張る。当然、トップの振動は変化する。ピックガードですら気になることがある。
もっとも、意外に影響が少ない部分もある。
ギターの肩辺りはどちらかといえば振動の変化は音への影響はすくない。
反対に、お腹の部分はかなり影響がある。特に、ブレイシングが張ってある付近はなおさらだ。

ここで、貼り付けるものについて、考えてみる。
貼り付けるものが、木と同じような特性を持っていて、隙間無く密着して貼られていたとする。
これは、トップの木が厚くなったのと同じようなものだ。合板のトップはもともとそんな感じだ。
ピックガードを塗り込みにしたり、ベッコウなど、いろいろな素材を試行錯誤しているのも、音への影響を考えてのこと。
では、それが、紙などの場合はどうだろう。
柔らかい紙は、一般に音を吸収する。毛羽だった紙は防震効果がある。
ハウリング防止にサウンドホールに紙を貼ることがあるが、それはこの効果も期待されるからだ。

シールを貼る、ということは、その場所、材質によっては、音にかなりの影響を与える恐れがある、ということだ。


次に、塗装に対する影響を考える。

ギターに用いられる塗料は、セラックニス、ラッカー、ポリウレタンなどである。
塗装は、見た目の美しさ、傷などからの保護としての役割ももさることながら、
シーズニングされた木材の状態を維持するとともに、木、本来の変化にも対応し、楽器としての姿を保つのにも役立っている。
高級なギターほど塗装は薄く、木に密着し、その振動への影響を減らすよう考慮されている。
つまり、保護の役割があるとはいえ、塗装そのものも非常に繊細なものなのだ。
湿度、紫外線、温度変化などにより、塗装は劣化したり、変色したり、ひび割れたりする。
この塗装の上にシールを貼るということは、どういうことになるのか。
紙ベースのシールの場合、紙は湿気を呼ぶ。
樹脂ベースの場合、樹脂の溶剤の影響を受ける恐れがある。
シールの貼られたところと、その周りでは、環境が変わることになり、塗装変化の歪みが現れる。
変色や、ひび割れが起こる可能性があるのだ。
シールに付けられた接着剤も影響がある。
溶剤を含んだものならばストレートに塗装を痛める。
水分も含んでいるから、その影響も受ける。
糊はカビの繁殖床となることが多い。
ただし、分厚いポリウレタン塗装ならば、これらの影響は少ない。


なぜ、シールを貼るのか、といえば、
ギターの見た目を良くしよう、オリジナリティを出そう、こだわりのアイデンティティを身につけよう、
などと、デザイン的な要素の目的が多い。
時には、傷を隠そうと貼る場合もある。
ここで、ちょっとギターのトップについて考える。
前述のように、ギターのトップはスプルース系の材が主に使われている。
このスプルースというのは、紫外線で赤く変色する。
「トップが飴色にきれいに焼けている」という表現をよくするが、これはスプルースの変色によるところが多い。
もちろん、塗装もいくらか変色する。
また、年数が経つにつれ、冬目と夏目の木部の水分量や樹脂がそれぞれ独自に変化し、木目がきれいに浮き出てくる。
このトップにシールを貼るということは、どういうことになるのか。
シールで覆われた部分は、紫外線、温度変化などが貼られていない部分と異なった状態で維持される。
すると、シールの貼られた部分と貼られていない部分では、明らかに色、状態が異なってしまう。
いったん、シールの痕の色の変化がついてしまうと、ほとんど消すことはできない。
つまり、入れ墨のように地肌に一生残ってしまうのだ。
もちろん一生、そのシールを貼っていれば、その下の痕など気にならないかもしれない。
しかし、ギターというものはだいたい50年は持つようにできている。
だが、シールはそんなには持たない。
デザインの老古化、陳腐化だけでなく、材質的にもそれほど持つシールは少ない。

シールは、いずれは、剥がされる運命なのだ。

そして、剥がした後には、入れ墨のような痕が残っているのだ。

ところで、ギターの傷を隠すためにシールを貼るのはどうか?
いずれは剥がされるシールを貼ってしまうと、結局は傷よりも大きな痕を残すことになる。
また、傷ついた部分は、塗装も痛んでいるから、水分などの影響はより受けやすくなっている。
ここに、変なものをかぶせたりすると、傷は益々痛む可能性が増す。
ギターの傷は本人が思ったほど目立たないものだ。
修理が必要な傷か否かを早く見定めて、修理が不要ならば、そのままにしておいた方がよほどギターのためになる。


というわけで、ギターのトップにシールを貼ることについて、私は許せない!のだ。
トップ以外の部分については、多少音への影響が少ないのだが、基本的には同じだと思う。
例外的なのは、ピックガード、メーカーロゴ、ラベルなどだろうか。
これらは、通常ギターと一生つきあっていくものだから。
メーカーも影響について意識しているしね。


以上は、私の独断と偏見に満ちた私見です。こんなことを考えるやつもいる、程度に楽しんでください。


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